介護は身体的なサポートに加えて、心のケアに繋がる言葉かけも非常に重要です。相手の尊厳を守り、信頼関係を築くための大切なポイントについて解説していきます。
1.はじめに:言葉かけは心の支え

介護が始まると、想像していた以上に大変なことがいろいろ出てきます。介護する側は思い通りいかないこともたくさんあり、悩むこともたくさん出てきますよね。
一方、介護される側もさまざまな感情に心が揺れ動きます。今までは当たり前のようにできていたことができなくなり、自信を失ってしまう人も少なくありません。
そんな状況の中で、会話はとても大切なコミュニケーションになります。
介護者からの言葉かけ1つで介護される人は笑顔にもなりますし、不安が解消されることも多いですね。
また、介護される人の笑顔が増えることで、介護する側の大変さが軽減し、モチベーションの維持に繋がることもあります。
2.介護していく中で尊厳を守るための言葉かけとは?

では、介護していく中で相手の尊厳を守るための言葉かけとは、いったいどのようなものなのでしょうか。
大切な家族を傷つけないための13のポイントについて見ていきましょう。
ポイント①上から目線にならない
相手の尊厳を守るためには、決して上から目線にならないことが大切です。介護しているからといって上下関係ができるわけではありません。
相手の年齢に関わらず、年上であっても年下であっても、対等な関係を維持しなければ相手を傷つけてしまうことがあります。
自分の子供に言い聞かせるような言葉遣いをしないように注意が必要ですね。
ポイント②行動を強要しない

介護をしていると、つい相手に対して行動を強要してしまうことがあります。
例えば「ごはんの用意ができたから食べて」「今からトイレに行くよ」など、有無を言わさず相手を動かそうとしてしまうことはありませんか?
しなければいけないことがたくさんあると、「今○○してくれないと困る」という状況が頻繁にあるのですが、これも相手にとっては精神的な負担になります。
なかなか難しいかもしれませんが「ごはんの用意ができたら食べようか」「トイレに行きたくない?」と提案する形で言葉かけができるのが理想的ですね。
ポイント③優しい言葉を使う
たとえ家族であっても、キツイ言い方や冷たい言い方をしていると信頼関係は一瞬でなくなってしまいます。
余裕がないと言葉遣いが荒くなってしまう人は、意識して優しい言葉を使うように注意が必要です。
介護される人は思い通りに動けない自分を情けないと思い、お世話をしてくれる人に対して迷惑をかけているという気持ちも少なからず感じています。
キツイ言い方をすると居たたまれない気持ちになってしまうので、優しい言い方ができないときは、言葉を飲み込んで沈黙でやり過ごす方がまだマシかもしれません。
自分が言われたら悲しくなるような言葉は絶対に使わないようにしたいですね。
ポイント④決めつけた言い方をしない

家族を介護をしていると、相手のことをすべて理解したように錯覚してしまうことがあります。
しかしたとえ家族であっても相手には相手の意志があるので、どんなときも決めつけた言い方をするのは良くありません。
「これがしたかったんでしょ」「もう眠いでしょ」など一方的に決めつける言い方をせず、「これはどう?」「もう眠い?」と相手の気持ちを尊重する言い方をした方がいいですね。
ポイント⑤不安を煽らない
不安を煽らないというのは、介護ではとても大切なポイントになります。
暴言や暴力が絶対にダメなのは当然ですが、たとえば「今トイレに行っておかないと夜漏らしても知らないよ」などの言い方も良くありません。
体が不自由な相手に不安を煽る言い方をするのは、やはり尊厳を踏みにじる行為になってしまいます。
優しい言葉かけを心がている人は大丈夫だと思いますが、相手が不安でドキッとしてしまうような言い方はしない方がいいですね。
ポイント⑥存在を否定しない

介護される人は孤独になると尊厳を傷つけられたように感じてしまいます。存在を否定しないということも相手の心を守ることに繋がります。
直接相手を否定するわけではなくても、介護される人は自分がどう思われているのか、不安に感じているかもしれません。
そのため家族で会話しているときなどに「介護がなかったら行けるけど」「お世話しないといけないから無理だわ」などという言い方にも注意が必要です。
ポイント⑦突き放すような言い方はしない
介護をしていると、相手も気分で話を聞いてくれないことがあります。疲れていたり時間がなかったりすると、正直イラッとしてしまうこともあるでしょう。
しかし「もういいわ」「勝手にしたら」「好きにしたらいいじゃない」などという言い方は険悪な雰囲気になるだけです。
譲歩するのも無理なときは、お互いに気持ちがリセットするまでしばらく離れて、静かに様子を見守った方がいいでしょう。
ポイント⑧失敗やできないことを責めない

介護をするということは相手は身体が不自由だということです。失敗やできないことを責めないというのも大事なことですね。
何かを失敗すると一番ショックなのは本人です。羞恥心を感じて自分を情けなく感じているはずなので、いつも通り淡々と接しながら優しい言葉かけをしてあげるのが正解でしょう。
介護されている人は介護してくれる人の暗い表情や溜息なども敏感にキャッチしてしまうので、粗相や失敗があったときは特に注意が必要です。
ポイント⑨呼び方に親しみを込める
介護の言葉かけでは呼び方に親しみを込めるのも大切なポイントになります。
「ねえ!」「ちょっと!」などと呼ぶのではなく、両親なら「お母さん」「お父さん」と呼びかけ、他人なら名前で「〇〇さん」と呼びかけるのがいいですね。
本人が希望するなら「ちゃん付け」や「ニックネーム」で呼ぶのもOKです。
逆に馴れ馴れしく呼びかけられるのが苦手な人もいますので、「ちゃん付け」や「ニックネーム」で呼ぶときは必ず本人に聞いてからにしましょう。
ポイント⑩返事を急かさない

介護するのが高齢の両親だった場合、耳が遠くなっていることもありますね。疲れや眠気でボーっとしていることもあるでしょう。
そのため声かけをするときは、すぐに答えが返ってこなくても、キツイ言葉で返事を急かすのも良くありません。
「ちょっと!聞いてるの!?」と大きな声を出したり、いきなり後ろから肩をグイっと掴んで「何回も同じことを言わせないで」などと言うのも尊厳を傷つけしてしまう可能性があります。
相手は故意に無視しているわけではなく、気づいていない可能性もあるので、反応がないときは正面に回って顔を見ながら声かけをするのがいいかもしれませんね。
ポイント⑪プライバシーに配慮する
介護をするときは、着替えや排泄のサポートをすることも多いですね。どんな状況でもプライバシーに配慮することも非常に重要です。
高齢だからといって、着替えや排泄で羞恥心がないわけではありません。
忙しくても周りから見えないようにカーテンを引いたり、排泄に関する言葉かけも大声では言わないなど、小さな気遣いが相手の自尊心を守ることになります。
また親しい人にも個人情報を勝手に話さない、秘密をバラさないなど、きちんと相手の気持ちを考えて行動することが信頼関係の維持にも繋がりますね。
3.介護する側も無理をしないことが大切!

介護をするときは相手の気持ちを考えて行動することが大切ですが、介護する側も無理をしてはいけません。介護者自身を守るための対策も考えてみましょう。
ポイント①疲れているときは正直に話す
介護する人が疲れていると、話し方にも余裕が無くなってしまうことがあります。相手を驚かせないように、疲れているときは正直に話しておくのも1つの対策になるでしょう。
「今日はちょっとしんどくて。」「風邪気味だから余裕がないんだけどごめんね」と先に話しておくと、少しいつもより言葉かけが少なくても相手が不安になることはないはずです。
無理やり笑顔を作ってストレスを溜め込んでしまうよりも、弱い部分を見せてお互いに気遣える関係を作れるのが理想的ですね。
ポイント②どうしても手が離せないときもあると説明しておく

介護してもらう側は、やはり自分が呼んだときはすぐに対応してほしいというのがホンネです。
しかし毎回すぐに飛んで行ってお世話ができるとは限りません。家事や育児など、すぐには対応できないこともありますよね。
そのため相手には、「今日は忙しくて。どうしても手が離せないときもあるかもしれない」と説明しておくのもいいかもしれません。
介護が日常になると当たり前のことでも忘れてしまうので、お互いに理解し合うためにも、時間があるときに穏やかに伝えておくことが大切です。
ポイント③「こんな言い方をしてくれたら嬉しい」と伝えておく
介護をしていると相手から思いもよらない発言をされて、介護者の方が傷つけられてしまうこともあります。
頑張っているのに心無い言葉が返ってくるのは切ないですし、悲しくなりますよね。
そんな状況が何度も起こらないように、「そんな投げやりな言い方をされたら悲しい」「こういう言い方をしてくれたら嬉しいな」と伝えておくのもいいでしょう。
感情をぶつけるのではなく冷静に伝えると、相手も言葉遣いや態度を改めてくれるかもしれません。
まとめ:優しい言葉かけで心地良い関係を築きましょう!

介護をしていると、いつも穏やかにニコニコと過ごせるわけではありません。
しかし相手の目を見て、笑顔で、ゆっくりと話す。そんな小さなことが、介護を受ける人の心を温め、尊厳を守ることにつながります。
優しい言葉かけで心地良い関係を築いてくださいね。


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